山陽新聞 押し紙裁判 準備書面

準備書面(10)


平成20年(ワ)第943号 損害賠償請求事件
原 告 原 渕 茂 浩
被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名
2010年5月17日

準備書面(10)


岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中

                                          原告訴訟代理人

                                               弁護士 位 田  浩


第1 注文部数について

  1  独占禁止法による押し紙の禁止は、同法2条9項5号の優位的地位の不当利用に対応した規定で、一般指

  定でいうと14項に相当する。新聞社が販売店に対して「注文部数」そのものを増大するよう求めることもあるの

  で、これを防ぐため、注文部数とは、販売店の現実の販売部数に一定の予備紙を加えたものとされてきた(甲

  6)。

   このように、注文部数とは、現実の購読部数(=実売部数)を基準にして客観的に決められるものであること

  は、本件の時期も変わりはない。

   北國新聞社事件に関する被告提出の論文(乙47)において、「新聞販売店が『注文部数』どおりに注文しやす

  いような環境の整備を図っていれば、本件行為は起こらなかったはずと考えられる」と指摘していることからも明

  らかである。

 2 ところで、被告らは、北國新聞社事件の後になって、「新聞公正取引協議会運営細則」における押し紙の禁止

  に関する規定が削除され、予備紙を購読部数(=実売部数)の2%とする基準がなくなったとする。しかし、同規

  定が削除されたのは、特殊指定にかかわる事項を協議会の事業目的から除くことにしたからにすぎない。(乙4

  9)。予備紙は何倍でもかまわないとなったわけではない。

 3 上記論文(乙47)によれば、北國新聞社事件において「予備紙について、・・・必ずしも2%の範囲内で対応で

  きない新聞販売店が存在していたため、本件における予備紙の部数の解釈については、新聞販売店が新聞販

  売を確保する上で必要な部数としたとしている。」

   そこにいう「新聞販売店が新聞販売を確保する上で必要な部数」が何を意味するのか判然としないが、2%の

  範囲内で対応できる販売店も存在していたのであるから、そのような販売店においては、実売部数に2%以内

  の予備紙を加えた部数が「注文部数」となる。

 4 本件において、仮に上記3のような解釈をとったとしても、原告は、現実の購読者のいる実売部数のほか、実

  売部数の2%を超えるような予備紙は新聞販売を確保する上で必要なかった。

   したがって、原告の販売センターにおける注文部数は、多くても現実の購読部数に2%の予備紙を加えた部

  数であった。


第2 求釈明の申立について

   原告は、被告らによる押し紙の事実を明らかにするため、2009年12月6日付準備書面(8)において、釈明

  を求めた。しかし、いまだに回答がないので、速やかに回答するように求める。

   なお、求釈明事項第1項において、架空読者を除いた実売部数を明らかにするよう求めているが、ここにいう

  「架空読者」には、各販売センターの店主やその家族名義によるものを含むので、それらを除外して実売部数

  を明らかにすることを重ねて求める。

                                                                以上


平成20年(ワ)第943号 損害賠償請求事件

原 告 原 渕 茂 浩

被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名

                                                        平成22年2月16日

岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中

                               被告ら3名訴訟代理人弁護士 香 山 忠 志


                            準備書面(10)

1 被告らの主張する「セット」「朝刊」の各部数は、乙21の請求書記載の部数のとおりである。これによれば、原

  告の準備書面(1)の一覧表(1)〜(5)の「送り部数」(セット、朝刊の部数)について、乙13の仕訳日報表およ

  び乙21の請求書にあたる部数とは全く相違している。

2 仕訳日報の部数と請求書の部数の見方

  乙13の仕訳日報表(5日数)でいう「セット・朝刊・夕刊部数」と乙21の請求書で販売センターに請求する「セッ 

  ト・朝刊部数」の数字の関係については、以下のとおりである。

(1) 乙8の契約書第7項の代金額の算定で、「毎月5日定数をもって取引部数とし・・・」とあり、5日定数とは毎月

  販売センターより報告してくる仕訳日報表(5日数)記載の部数のことである。

   (なお、例、甲第3号証の10の平成15年4月1日数のように、原告が期限までに5日定数の仕訳日報表をFA

  Xしてこなかった場合には、集計担当者の柳生久美子氏が原告へ直接電話を架けて尋ねると、「1日数をその 

  まま5日数で処理してくれ」と言われ、朝刊部数合計1851部(目標1850部)夕刊部数合計309部(目標321

  部)で処理している。乙13の15年4月5日定数について、日付を1から5と直し、合計数1603の原渕の計算間

  違いを訂正し1596と直しているのがそれである。)

(2) そして、仕訳日報表(1日数/5日数)の記入欄には、「セット」「朝刊」「朝刊合計」、「セット」「夕刊」「夕刊合

  計」の各合計欄に部数が入っている。これは、朝夕刊を読んでいる読者が「セット」、朝刊だけを読んでいる読者

  が「朝刊」、夕刊だけを読んでいる読者が「夕刊」として一購読者からもらう購読代金に差異があるためーそれぞ

  れの購読者へのそれぞれの領収書を発行する部数のことである。

(3) 他方、販売会社が山陽新聞社から仕入れる場合の新聞仕入原価は、「セット(朝夕刊)」、「朝刊」の2種類だ

  けで、「夕刊」だけの仕入原価はない。このことに対して、販売センターが販売会社から仕入れる場合には、請

  求書(乙21)にあるとおり、「セット(朝夕刊)」と「朝刊」の新聞代金しか、書かれていないのである。そのため乙

  21の請求書のセット、朝刊の部数と乙13の仕訳日報表の部数とは同一月でも一見すると違いがあるがごとく

  である。この両者の関係は以下のとおりである。

  @ 乙21にいうセット部数=仕訳日報のセット(朝夕刊)部数+仕訳日報表の夕刊部数

  A 乙21の朝刊部数=仕訳日報表の朝刊部数合計ー@セットの仕訳部数

  B そこで、平成15年4月を例にとってみると、乙13の仕訳日報表のセットの合計255部+夕刊の合計54部

  =309部(仕訳日報表の夕刊合計の合計部数)となる。この309が請求書のセット(2992円)請求原価の元と

  なる。

      309×2992=924,528

   また、乙21の仕訳日報表の朝刊合計1851−上記@セット(セット+夕刊=夕刊合計309部)=1542部が

  乙13の朝刊(2325円)請求原価の元となる(=朝刊の合計1596部ー夕刊の合計54部=1542部)。

     1542×2325=3,585,150

(4) 上記より乙21のうち、平成15年4月の岡輝販売センターへの請求書をみると、セット309部(原価924,52

  8円)、朝刊1542部(原価3,585,150円)となっている。

   なお、仕訳日報表にある「店置、立売」の部数は販売センターへの請求書(乙21)の新聞代金欄の部数・請求

  原価には含まれていない。